研究紹介

再生可能エネルギ駆動型
湖沼環境モニタリングシステム

本研究では湖沼の水質を継続的に調査する浮遊型ロボットブイを用いたモニタリングシステムを研究しています.湖沼の水質汚濁は大量に繁茂した水生植物が枯死することで進行するとされています.水生植物の大量繁茂のメカニズムは明確にはされていませんが,一説には河川から流入した生活排水および産業・農業系排水によって湖沼の富栄養化が進み,水生植物の大量繁殖につながるとされています.水質の悪化は自然環境への影響だけでなく,人の健康被害にもつながります.このため汚濁メカニズムを早期に解明し,進行を抑える必要があります.汚濁メカニズムの解明のためには継続的なモニタリングが必須とされています.


本学がある福島県の猪苗代湖は10年ほど前に7年連続水質日本一を記録した清明な湖でした.しかし水質の汚濁が進み,2010年には??(水質を示す情報の1つ)が環境基準値の7倍の値を示しています.現在までに,猪苗代湖の水質汚濁メカニズム解明のため,定期的に水質調査のためのフィールドワークが実施され,その仕組みが研究されています.しかし現地に赴いての水質調査は多くの時間と人員が必要になることから,より効率の良い調査計測方法が求められています.


そのため,我々は再生可能エネルギー駆動型湖沼環境モニタリングシステムを提案しています.このシステムでは複数の環境モニタリング装置NOMAD(Network Oriented Multimedia Atmosphere Detector) を用います.NOMADは複数の水質調査を搭載した浮遊型センサブイであり,太陽電池により自立稼働し,長時間人為的介入無しでの継続的な調査活動を実行します.この装置により湖沼の水質を調査し,取得したデータを随時サーバに蓄積します.送信されたデータはウェブブラウザ上で閲覧可能にすることにより,このシステムの利用者は現地赴く手間や時間を省略して湖水の情報を把握できます.

自立調査する環境モニタリング装置NOMAD


NOMADはシステムにおいて実際に水質を調査する浮遊ブイ型ロボットです.装置の自立駆動を実現する給電モジュール,計測とデータの送信を計測モジュール,湖水の流動を捉えるドローグモジュールの3つのモジュールから構成されています.推進装置を持たずに湖沼を漂流させることで,GPS情報から湖の流行・流速を推定します.ドローグモジュールは水の抵抗を受けやすい形状として設計されており,モジュールの推進を調整することで水流を調査する震度が調整可能です.これにより湖沼の表層流だけでなく,深層の流れに乗せてNOMADを漂流させられます.


内部には各種水質センサ,マイコン,スマートフォン,太陽電池を搭載しています.NOMADは漂流中に各種センサにより水質の情報を取得します.マイコンはセンサ群の制御とセンサ情報をスマートフォンに転送します.スマートフォンでは前に述べたGPS情報の取得だけでなく,転送されたセンサ情報の処理および内蔵のカメラによる水中の画像や動画を撮影します.これらの情報を携帯電話回線を通じてサーバへ送信します.


内部に搭載したシステムは全てソーラーパネルにより駆動します.NOMADには曇りの日でも発電できる特殊なソーラーパネルが4枚搭載されており,それらにより日中はシステムへ給電し続けます.また,システム駆動に必要な電力以上に発電した場合は,それらの電力をリチウムイオン電池に充電し,夜間や雨天など日照が望めない時に用います.これにより,長時間継続的な計測を実現します.

モニタリングデータ集約システム


この研究では長時間人為的介入無しで水質を調査を目的としています.そのため,水質の計測から情報の公開までを全自動で実現します.そのため,データ統合・集約システムおよびWebサイトとしてユーザへ提供するシステムを開発しています.具体的には,各NOMADに搭載されたスマートフォンにおいてGPSや水質センサ情報を辞書データへ変換します.これをクラウドサービスを用いてサーバへ逐次アップロードしていきます.


サーバに蓄積された水質情報はウェブページとして提供され,ブラウザで閲覧できるようにします.ユーザはWebページのフォームから閲覧する日時を選択します.このシステムはサーバ上の辞書データから該当する日付の情報を抜き出し,Google Maps API を用いてマップ上にマーカを表示します.ユーザは表示されたマーカをクリックすることで詳細な水質情報を閲覧することができます.

湖沼でのフィールドワーク


この研究では時々刻々と変化する環境の中で装置を長時間使用する必要があるため,屋内の実験だけでなく,フィールドワークをしています.


実験の結果,NOMADは実際に波風のある自然環境下でも浮遊すること,浸水しないことが確認されました.現在は実際のシステムで検証をしています.


また,GPS情報および水質情報を取得するシステムの実証実験の結果を図に示します.グーグルマップの上にマーカが表示され,それぞれの情報を提示出来ていることがわかります.現在はシステムのマッシュアップをしています.