研究紹介

オンデマンドな支援を提供する
ライフサポートシステムREACH

介護支援を目的とした生活支援システム REACH


この研究では,要介護者の生活を助けるための,ロボットを用いた支援システムを開発しています.この研究では主に,片麻痺の患者さんのような意識がはっきりしているが,ベッド上などの限られた空間での生活を余儀なくされている人を支援します.支援対象者は,生活の範囲や出来る動きが限られているため,生活していくために介助者の支援が必要です.


このとき支援には様々な性質のものが考えられます.移動や入浴などの一日における「作業回数は少ないが複雑で力がいるような作業」から,ものを運ぶことやカーテンを開けるなどの「作業回数は比較的多いが単純で簡単な作業」があります.この研究では後者のような人に頼むまでもないけれど支援してほしい作業に焦点を当て,支援をするシステムの開発を行っています.


これらの「作業回数は比較的多いが単純で簡単な作業」は様々なものがあります.しかし,支援対象者が自分で出来る事までシステムで支援してしまうと,健康を損なう可能性が高くなります.これは麻痺患者などにとって毎日の作業行動がリハビリとなるからです.積極的に日常生活を自身で行う事が早期回復,そして社会復帰へつながると言われています.逆に1から10まで介助者に頼り切ってしまうと,身体能力が衰えて寝たきりにつながると言われています.


そのため本研究では,支援対象者を取り巻く環境や症状を理解して支援を提供する事をねらっています.支援対象者の症状や状況,行おうとしている作業などに基づいて最適な行動を判断します.具体的には「補助する」「介助者を呼ぶ」「静観する」から行動を選択します.


このように状況や症状などにあわせて,オンデマンドな支援を提供します.この研究では開発している支援システムをREACH (Robotic Enhanced Assistant Conquering Handicaps)と名付けました.このシステムでは,支援対象者の支援要求を移動ロボットを利用して実現します.この動画はREACHのコンセプトを表しています.四角い移動ロボットが支援対象者のベッドの角度を調節したりゴミ箱を運んだりする例を示しています.


具体的には,REACHは操作装置,移動ロボット,ライフサポート・サーバの3つのモジュールにより構成されています.まず支援対象者が操作装置を用いて,ロボットに支援してほしい内容を指令としてライフサポート・サーバに送信します.サーバでは受信した指令をロボットが実行できるコマンド群に変換し,ロボットに送信します.そしてコマンドを受け取ったロボットが実際に支援を実行します.このような流れで支援を実現します.

操作装置


このシステムでは支援対象者自身によりシステムを操作できます.そのため,支援対象者が極力簡単にシステムを操作できることをめざした操作装置開発を進めてきました.本研究での支援対象者は体が不自由であることが想定できるので,指先だけで操作可能なものや,半身不自由者を想定して自由な半身のみで操作出来る装置開発をしました.


これまで,Androidスマートフォンや,パソコンのカメラを用いたジェスチャによるシステムの操作を提案してきました.しかし,支援対象者が必ずしも機械操作に長けているとは限りません.


そのため,機械操作が不慣れな人たちにも簡単にシステムを操作することができるように,普段人間が意思を伝えるための手段としている発話に着目しました.そして,現在では音声による操作装置の開発を進めています.例として示したこの動画では,要求を操作装置に喋って入力すると,入力された言葉を処理してロボットが実行可能な動作(移動と作業)を生成します.

移動ロボット


提案したシステムにおいて実際に支援を実現するのが移動ロボットPAL(Physical Agent for Life-support)です.このロボットを利用してテレビ,エアコンなどの家電や,カーテン,ドアなどの住設機器の操作,およびゴミ箱や簡易トイレなどの物体の搬送をすることを目的に開発しています.

ロボットはオムニホイールと呼ばれる特殊な車輪により全方向移動を実現します.全方向移動とは自動車のように「前後には進めるけど,横には動けない.しかもその場では旋回できない」ようなものではなく,「前後左右に進める上,その場でも旋回出来る.それらの動作を組み合わせても実行出来る」移動方法です.これに加えて,住環境内で安全に動作できるようにカメラやレーザーレンジファインダ,サウンドセンサなどの様々な外界センサを搭載しています.


一方でこのロボットは,住環境で住設機器の操作や物体の搬送のような物理的な操作をするための装置GEAR(Gesture Evolved Actuation Router)を搭載しています.GEARはモータ,三叉の手先,これらを繋ぐためのバネを利用した機構といったパーツを組み合わせたものです.これをロボットに搭載し,環境を操作するためのアタッチメントに駆動力を伝えて操作を実現します.


ライフサポートサーバ


操作インタフェースより入力された支援内容を受信し,ロボットに送信するサーバがライフサポート・サーバです.ロボットは,支援対象者の要求を実現する際に,人間が支援する時と同じ行動をとって実現するわけではありません.例えば人間で例えると「お茶ちょうだい」と言われて実際に行動することは「立つ」「キッチンまで歩く」「急須をつかんで移動する」「急須の蓋を開ける」・・・と単純な動作の組み合わせにより成っています.これを一言で「お茶ちょうだい」で済ませているということです.


ロボットに対しても勘弁な一言で支援依頼をすると考えられるため,人間からの支援依頼の内容を,ロボットが動作できる行動の組み合わせに変換する必要があります.また,それ以前に支援の内容によって「補助する」「介助者を呼ぶ」「静観する」を判断する必要があります.これらの作業の判断と分解をライフサポート・サーバで実現しています.

生活支援の実験

要介護者の生活を支援するロボットシステムを実際に製作し,住環境を操作する実験および検証を行っています.これは住環境に設置されているカーテンを開閉する実験の動画です.ロボットに搭載されているGEARにより,住環境に設置されているカーテンを改造したGEARに駆動力を伝え,開閉しています.このとき,操作装置としてはジェスチャを用いたシステムを使用しています.


次に,ベッドから移動することが困難な支援対象者を想定した場合,それらの人たちは簡易トイレを使うことがあります.簡易トイレは臭いを出す場合があるため,トイレを支援対象者の側に持ってくることや片付けることが望まれています.これを実現するためにGEARのアタッチメントを変更して,トイレの搬送を実現しました.